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第47話 切り取られる令嬢②

Author: 花柳響
last update publish date: 2026-06-07 06:01:27
 透の重荷。

 数日のうちに、この屋敷の使用人たち、そして天野家と繋がる社交界のネットワークの末端に至るまで、この「新しい筋書き」が真実として定着するだろう。

 胃の底が痙攣し、胃の奥が酸っぱく熱くなった。

 クローゼットへ向かおうとして立ち上がった足が、絨毯の上でもつれる。

 怖い。

 唇の裏側を噛み、飲み込まれかけた息を押し戻す。怖さに名前をつけるだけでは足りない。私は、その怖さがどこから来たのかまで見失わないようにした。

 言葉を短くされるたび、私の人生まで勝手に片づけられていく気がした。

 自分の輪郭が、他人の手によって勝手に切り取られ、歪んだ形に塗り潰されていく恐怖。

 スマートフォンの通知が鳴り止まなかった前世の夜と同じように、世界中が私を安全圏から指差し、消費しているような錯覚。

 だが。

 絨毯の上に手をついたまま、私はギリッと奥歯を噛み締めた。

 前世の私はここで泣いた。

 理解してもらえない絶望に打ちひしがれ、部屋に閉じこもり、最終的には非常階段のひやりとした鉄の手すりを乗り越えた。

「……ふざけないで」

 乾いた声が、唇から漏れた。

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  • 死ぬために嫁がされた私、二度目の転生で冷酷御曹司と運命を変えます   第8話 生まれた場所だけが違った②

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     鼻の奥に、かすかなインクの匂いが残っていた。  手の中の金属製の万年筆は冷たく、指先に重い。  視線の先には、クリーム色をした分厚い上質紙。  その最上部に、逃げ場を塞ぐような活字が印字されている。 『婚約契約書』  黒光りする無垢材のデスクは、よく磨かれていて、触れれば指先まで冷えそうだった。空調の微かな音だけが、広い部屋の静けさに沈んでいる。  息をすることさえ、この整いすぎた空間では場違いに思えた。  万年筆の軸を、無意識に指の腹で転がす。  握るたびに、手のひらの熱が少しずつ奪われていく。その重みは、これから背負うものの重さそのものだった。  署名欄の片側には、す

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